私自身、地方の普通の公立高校から通塾なしで京都大学に合格しましたので、心境に通ずるものがあるだろうと感じ、回答させていただきます。とはいえ、公立高校と一口に言っても様々な学校があります。私が考えていることが一から百まで当てはまるとは思いませんので、前提として、私の状況をお話した上で、あくまで私はどう考えているか、ということを提示させていただければと思います。(結論を要約しておくと、1. 地方公立高校からでも通塾なしで難関大学に合格できる。2. そのためには、教科書を中心に据えて勉強する。ということになります。)
6000字を超える長文回答となってしまいましたので、目次を付します。
私の状況(前提として)
結論
差を埋めることは「可能」か?
差を埋めることは「必要」か?
とるべき戦略
実践的アドバイス
具体的なこと(参考書とか)
終わりに
1. 私の状況(前提として)
私が通っていたのは一応は進学校で(いわゆる"自称進"です)、多くの人が中堅国公立を、校内上位層が旧帝大(九大、阪大)を目指しており、東大京大、医学部も目指す人はいたでしょうが、合格者が毎年いたわけではありません。
偏差値は調べたところ普通科が60前後、理数科(私立だと特進コースにあたる人たち)が65程度になるようです。といっても、公立の進学校は数も少ないですし、毎年定員割れしかかっているのもあって、学力層は幅広いです。私自身は普通科文系の首席でした。
進学校ですから、当然大学受験を前提にカリキュラムが組まれていますが、進度がとりたてて早いというわけではありませんでした。全国模試の大問選択で、進度の遅いほうしか選べない、といえば伝わるでしょうか。塾や予備校で(おそらく)教えられている受験ライフハック的なものも、そこまで教えられた記憶はありません。
また、高校外の状況ですが、冒頭の通り、通塾はしていませんでした。一応Z会を受講してはいたものの、映像授業はほとんど見ておらず、役立てることができたのは共テ直前の問題演習や2次試験の問題演習のみです。学習環境としてはリビングか私室、受験直前には学校の自習室も使っていました。
2. 結論
ここまでの前提をお読みになって、いかがでしょうか。どれくらい似ていて、どれくらい違っているでしょうか。周囲の環境、ご自身の状況......。簡単に、比較してみてください。
全体的に、私と同じくらいか、それよりよい環境・状況にいるのであれば、きちんと努力する限り、難関大学合格も、そう困難ではないと思います。これについては後述します。
逆に、私よりも状況がよくないと感じる場合(例えば、高校がそこまで進学に本気じゃないとか、旧帝大全体として見ても数年に一度しか合格者が出ないとか、同じくらいのレベルの高校だが上に何人もいる、など)には、一層の努力と、何かしらの工夫が必要だと思います。それは一概には語れない上、私の実体験からは離れてしまいますので、今回の回答ではリーチしきれません。もちろんこの回答も役には立つと思いますが......。
さて、ここからは、私と同じくらいか、それよりよい環境・状況にいることを前提にお話ししたいと思います。「地方の公立高校」も私の出身校を念頭に置きます。
まず、結論からですが、地方の公立高校からの通塾なしでの難関大合格は、可能です。また、「都会の中高一貫校との差を塾なしで埋めることはできるのか」とのことですが、これは”ある意味では可能、ある意味では不可能”です。そして、埋める必要があるか?と言われると、私はあまりないと思っています。”差”という観点について、まず、「可能かどうか」のほうから少し深堀りします。
3. 差を埋めることは「可能」か?
この”差”の最大にしてもっともわかりやすいのはカリキュラム、とりわけ進度の差でしょう。中高一貫校に通ったことはないですが、塾講師・家庭教師として教えていると、中高一貫の生徒は私が高校で勉強した内容を中学時点でやっており、驚いた記憶があります(同時に、高校に入ってからは何するんだ?とも思いました)。
このレベルになると、進度差を埋めることはほぼ不可能です。ただし、自分で教科書を読み進めるなどして、例えば高二の間に高三の内容をあらかた終わらせておき、高三の授業は復習、授業外は問題演習にあてる、ということは可能でしょう。
他の”差”としては、カリキュラム上教えられる知識の差があるかもしれません。例えば難関大の問題に特化したような解法などがこれに該当するでしょう。こうしたものは(それを知る時期は別として)、今はインターネットでいろいろ仕入れることができます。特にYouTubeには様々解説動画がありますので、特に優れていると思ったチャンネルから情報を得ることが有効です(もちろんスマホの使いすぎには厳重に注意する必要があります)。
さて、もう一つの”差”として、周囲との切磋琢磨の有無・強度があるでしょう。超進学校では同じ難関大を目指す人も多く、互いにモチベーションを高める要因になっている......らしいです。これに関しても、現にこのプラットフォームがそうであるように、インターネットを通じて、近い目標に向かって努力している/してきた多くの人の姿を見つけることができるでしょう(改めて、スマホの使いすぎには厳重に注意する必要があります)。
また、共に受験に向けて頑張る仲間は近い目標の人ばかりとは限りません。目指す大学は違っても、共に頑張れる友人がいれば、あまり問題はないでしょう。
簡単にまとめますと、
・進度の差→埋めることはほぼ不可能
・知識の差→埋める手段はある
・切磋琢磨する仲間の差→埋める手段はある
となります。
4. 差を埋めることは「必要」か?
都会の中高一貫校と、地方の公立高校の間にあるこの”差”、そもそも埋めなくてはいけない性質のものなのでしょうか?大学入試で問われる範囲というのは、当然ではありますが高校までで教わる範囲に限定されています。究極的には、高校にすら通わなくても教科書だけ持っていれば、日本のどの大学でも受かりうると思います。ほとんどの人は独力で教科書を読もうともしませんし、一定の範囲を一定の期間で進めていくスケジューリングも難しいですので、学校や塾が必要になってくるわけです。
「都会の中高一貫校」や塾が大変優れてみえるのは、①このスケジューリングが特別(早かったり、受験に最適化されたりしている)、②教科書の内容と問題演習の間にある隙間を積極的に埋める指導をしてくれる(いわゆる受験テクニックなどはその最たるものです)、という点でしょう。その背後には、こんな戦略があると思います。
戦略A:「できるだけ早く新しいことを勉強し終えて、少しでも多くの時間を問題演習に費やし、それぞれの問題に合った解き方を知っていくことで、解ける問題を増やして点数を伸ばす。」
もちろんこの方法を否定はしません。ただ、地方公立高校、通塾なし、という条件では厳しいものがあると思います。それは、①特別早いわけではない進度、②生徒の層が広いため、全員にフィットするように教科書と問題演習をつなげて授業することができない、という、先程の都会の進学校とちょうど逆の性質があるからです。この戦略はある意味現代の受験に対して最適化がどんどん進んだ結果ではあると思うのですが、本当に効果がある人/環境は限られてくると思います。
5. とるべき戦略
こうした状況で、地方公立高校、通塾なし、という人はどうすればいいでしょうか?私がおすすめする、そして実際に採った戦略は、次のようなものです。
戦略B:「新しいことを知るのは学校の授業に任せ、その分基礎を固める。わからなかった問題は、教科書に立ち返って考える。基礎を固めた結果、応用問題も解けるようになって、点数が伸びる。」
個別の問題について、一々その解法を暗記したり、大量の問題を繰り返し繰り返し解いて身体に覚えさせる、というのは、時間がかかります。そうではなく、まず教科書の内容を徹底して身につけ、その上で問題を解いていく。もしわからない問題があったらその問題の解法を確認すると同時に、教科書の該当箇所を調べて、確認する(偶にそれではどうしようもない問題がありますが、受験の合否を左右するような問題では基本的にありません)。
なぜこの戦略をおすすめするのかというと、先述の地方公立高校の実情にフィットするからです。高校の授業は基本的に出席するものです(少なくとも私はそう思っています)。そこでは、教科書の事項を勉強していくカリキュラムになっています。戦略Bはこれに合う発想です。一方、戦略Aからすると、学校の授業は遅くて、欲しい情報がない、無駄な時間になってしまうわけです。これは大変もったいない。戦略B的な高校の授業と、戦略A的な通塾を同時に(しかも無自覚に)行おうとすると、どこかで破綻して、授業中に寝るとか、内職するとかの事態が生じるわけです。
ここまで読んでみて、どうでしょうか。多分”自称進”の先生たちが言うことと実はあんまり変わらないんじゃないかな、と思います。ただ、結局多くの人は教科書に立ち返ることなく、問題を解き解答を見て、「先生たちは信頼できない」とか「自称進だから」とか言うのです。もちろん、この戦略が向いていない人はいると思います。その場合は、正直なところ通塾や通信教材への課金(つまり戦略Aへのシフト)を考えたほうがいいかもしれません。
付け加えておくと、「先生を信頼できない」という場合にも、戦略の改訂が必要です。信頼できない、ということについては、生徒であるあなたと、教師である先生の、両方に原因/責任がありえます。先生のことを人として尊敬できるとか、心から信頼できるとか、そのレベルまでは必要ではありません。「この先生は必要な授業(=教科書の内容)をしてくれている」そして「私(に限らず生徒)が難関大学に合格したら喜んでくれるだろう」という程度の信頼があれば十分です。もし、その信頼も怪しいようなら、やはり通塾や通信教材への課金、あるいは相当量の自習が必要となる可能性が高いでしょう。
6. 実践的アドバイス
ここからは、前述の戦略に沿って、どう勉強していくのがいいのか?あるいは私がどう勉強してきたのか?という部分です。あくまで私の場合、ですので、個別の事情に応じてアレンジする必要はあるでしょう。
I. 授業の受け方:
i. 予習をする。といってもがっつりではなく、教科書の該当部分を流し読みすれば十分です。キーワードがわかればOK。私は授業開始直前、直後にざっと読む習慣にしていました。2-3分くらいでしょうか。該当範囲がわからなければ、予想をつけておきましょう。
ii. 授業をちゃんと聞く。理想は、授業だけ、復習なしで定期試験で7割取れる状態です。そこまでいかなくても、6割くらいは目指しましょう。どうしても眠い授業とかは、やはりありましたし(食後に優しい声の先生の授業だったりすると、私もかなり眠かった記憶があります)、体調を崩して集中できない/欠席する場合もあるでしょう。そういう場合は、しっかりと勉強しなおしてください。かける時間は授業時間の半分程度で十分だと思います(1時間の授業だったら30分の勉強しなおし)。
iii. 復習をする。ノートや教科書を確認して、わからなかった箇所があれば、まず教科書を読み込んでみる。それでもわからなければ友達や先生に聞いてみる。こちらもがっつりやる必要はあんまりないです。授業一回でどれくらい覚えられるかによって、復習の量を工夫するといいと思います。学校の定期試験であれば、授業と復習だけで7-8割は取れる状態を目指すといいと思います(試すことはオススメしませんが......)。私の場合はその日帰ってから課題も込みで各授業10分-60分くらいの時間かけて復習していました。
それに加えて、定期試験前に復習をすることで、理想的には満点、そうでなくても9割は取れる状態になるはずです。
iv. 出された課題はやる。当然のことではありますが、意味がないように見えても、ちゃんと力になりますし、何よりやるべきことをやらないまま放置するのは精神衛生上非常によくないです。自分のしたい勉強があれば、その上でやりましょう。
II. 問題集や参考書:
v. 自称進であれば、学校指定の教材がいろいろあると思います。基本的にはそれで十分です。逆に進学校だと参考書が自由、とかの事情もあるかもしれません。いずれにせよ、あれやこれや買うのはもったいないです。
vi. 全体を2-3周はするとよいでしょう。間違えた問題に関しては、時間を空けて、解けるようになるまで何回も取り組むこと。さらに、間違えるたびに、教科書の該当箇所を確認すること。基本的に、どんな問題集のどんな問題であっても、付属の解答解説で満足せず、教科書に立ち返って確認することを推奨します。ただし、過去問演習や実践問題の場合は、問題集の類問に立ち返るのがよい場合もあります。
III. 学習の進め方:
vii. 極端な先取り学習は必要ないです(高校の進度が遅すぎない限り)。
viii. 苦手を指摘されたり改善されたりする機会は少なくなりますので、苦手な箇所(特に科目ごと苦手な場合や単元ごと苦手な場合)は、なるべく早く潰しましょう。できれば高三に入るまで、どんなに遅くとも高三の夏休みの間に、突出した苦手は克服してください。
7. 具体的なこと(参考書とか)
かなり長々と書いてしまいました。この文章をここまで読んでいるあなたなら、熱意か忍耐かはわかりませんが、難関大合格に向けて必要な資質は十分あるんじゃないかと(勝手ながら)思います。
さて、私が使っていた教材を挙げておきます。ここに挙げているのは、特に重要/役に立ったものです。教科書・問題集は省略しました。教科書は自分では選びにくいですし、問題集は有名予備校から出ているものとか、名の知れたものであればそこまで差はないと思います。日本史だけは先生から個人的にすすめてもらったものですが、他はすべて高校で指定されたものです。
現代文:
桐原書店『現代文単語』
古文漢文:
それぞれ尚文出版の文法書
英語:
英語の場合は、教科書よりも文法書/単語帳の役割が大きかったです。ただ、文法書を単品で進めるのはかなりしんどいので、その補助として教科書があったイメージになります。
文法書(『DUAL SCOPE』)
単語帳(『システム英単語』)
文法語彙語法(『スクランブル英文法・語法』)
数学:
青チャート
日本史(共テおよび二次):
『山川一問一答日本史』
世界史(共テのみ):
教科書と資料集のみ
理科基礎:
教科書と資料集のみ
8. 終わりに
改めて、ここまで読んでいるあなたは、熱意や忍耐、あるいは好奇心にあふれている人でしょうから、きっと受験勉強でも成果を残されることと思います。
私の回答の結論は、こうなります。
1. 地方公立高校からでも通塾なしで難関大学に合格できる。
2. そのためには、教科書を中心に据えて勉強する。特に、問題集の解答解説で満足せず、教科書に立ち返る習慣をつける。
正直、異論は様々あるでしょうし、ご自身の置かれている環境や、目標、加えて学習方法の向き不向きといった条件で、採るべき戦略は変わってくると思います。しかしながら、目標が定まり、自己分析によって現状が把握され、その間をつなぐ戦略が見えてしまえば、あとは”頑張るだけ”です。
かなりの長文になってしまいましたが、ご自身に合う学習の進め方が見つかることを願っています。少しでも、この回答が役に立てば幸いです。