数学の解法暗記について
確かに解法暗記は大切です。しかし、それを単純暗記で終わらせてしまっては危険です。京大の整数問題を例に見ていきましょう。
「n^3ー7n+9が素数となるような整数nを全て求めよ。」(2018)
この問題は、整数kを用いて、nを3k、3k+1、3kー1とに場合分けして考えればすぐ解けます。しかし、この解法を単純に暗記しても、どこからこの解法を導く着想を得たのかが分からなければ、同じ解法を使う問題に対峙してもそれを見抜くことは困難です。この問題では、n=1を仮に入れてみると、値は3で素数です。次に、n=2を入れてみた場合、こちらも値は3で素数です。n=3の場合は15で素数ではない、n=4の場合は45で素数ではない、n=5の場合は99で素数ではない……。ここで何か気づくでしょう。すなわち、実験して得られた値は全て3の倍数になっていることに気づくはずです。となれば、与式の取りうる値は全部3の倍数なんじゃないか?という疑いが生じるでしょう。この仮説を確かめるために、まずはすべてのnに対し与式の値は必ず3の倍数になるということを証明すればよいことになり、そのためにnを3で割った余りに注目して場合分けをするという解法に辿り着くわけです(したがって、modを使えばもっと楽な計算で証明できます)。(i)n=3kの場合は言うまでもないとして、(ii)n=3k+1の場合、与式は27k^3+27k^2ー12k+3で、(iii)n=3kー1の場合、27k^3ー27k^2ー12k+15で、いずれも3の倍数になります。素数の中で3の倍数は3だけなので、結局この問題は、(与式)=3という方程式を整数nについて解けば良いということになります。
こんな感じで解法を深く見つめていくと、解ける問題も増えていきます。例えば、この問題。
「pが素数ならばp^4+14は素数でないことを示せ。」(2021文系)
p=2のとき値は30、p=3のとき値は95、p=5のとき値は639、p=7のとき値は2415、p=11のとき値は14655……。p=3のとき以外は、いずれも3の倍数です。よって、(i)p=3のときと、(ii)p ≠ 3の時で場合分けをして、(ii)p ≠ 3のときでは、さらに(a)p ≡ 1(mod3)のときと、(b)p ≡ 2(mod3)のときとで場合分けして、p^4+14が素数pに対し常に3の倍数となることを証明し、そのとき取りうる値は3のみであるが、p^4+14はp=2で最小値30であるから、3を取ることはない。したがって、p^4+14は素数ではない、という解決ができるわけです。
また、この問題も。
「素数p, qを用いて、p^q+q^pと表される素数をすべて求めよ。」(2016理系)
pとqの対称性からp≦qとしても一般性は失われないので、この大小関係のもと進めていきます。まず、2数の偶奇が一致するとき、その和は必ず偶数になりますが、pとqはいずれも素数なので、与式の取りうる値は最小でも8(p=2, q=2)であり、値が2となることはありません。このことから、与式の値は奇数であり、そのためにはp=2でなければなりません(片方は偶数でなければならず、p^qが偶数となるのはp=2の場合だけ)。すると、p=2と固定して、qに3、5、7、11……と入れてみればいいわけです。q=3のとき値は17で素数、q=5のとき値は57で素数ではない、q=7のとき値は177で素数ではない、q=11のとき値は2169で素数ではない……。q=3のときを除いて、すべて3の倍数ですね。しかし、この問題では、安易にqを3で割った余りで場合分けしてもうまくいきません。場合分けにさらなる工夫が必要になりますが、そこは自力でやってみましょう。
上の問題は、いずれも同じところから解法の着想を得ていることがわかったと思います。と同時に、個別の問題にだけ通用するような覚え方をしても、似た問題ですら手が止まってしまうということも。やはり何事も、勉強というからには自分の頭で考えなければなりません。ただ単に、与えられた結果の知識や表現を覚えるだけではダメですね。その点、受験勉強は大変なものですが、そういったことも志望校という目標に向かって一途に続けられる人こそ、本番で勝っていく人たちなのでしょう。私も偉そうなことは言えませんがね。